長期熟成のポテンシャルを持つ昔スタイルなヴィンテージ
2021年は、フランスだけでなく地球全体にとって厳しい年であったが、それを難なく乗り越えられたAOCシャトーヌフ・デュ・パップにとっては、困難より心配ごとのほうが多かったといえる。
シャトーヌフ・デュ・パップの生産者達には、2021年ほどひどい春の霜害の記憶は残っていない。特に早熟なセパージュであるグルナッシュ、シラーそしてブールブーランへの影響が大きく心配された。しかし幸いなことに最悪のケースは免れた。2021年ヴィンテージは最終的にはそれほど特殊ではなく、それよりも15年ほど前の天候条件やワインのスタイルを彷彿させられる仕上がりとなった。
2021年4月7日から8日の夜半、ほぼフランス全土が寒波に覆われた。その通り道にあった全てが影響を受けたが、特に果樹やブドウへの打撃は大きかった。強い風が吹き、ローヌ川がすぐ近くに位置するアペラシォン・シャトーヌフ・デュ・パップが受けた霜の害は、他地域に比較して軽度で済んだといえる。この晩の霜は主に気温が-1.5°Cになったブドウ畑周辺での被害が甚大であった。(ヴォクリューズ県の他地域では-7°Cが記録されている)
2月の平均気温が例年比+2. 5°Cになるなどとても暖かい冬の後に訪れた春は、逆にとても涼しかった。続く夏は6月半ば、7月末そして8月半ばに一時的にとても暑くなったが、猛暑というほどではなかった。夏の降雨量は55から77mm、8月初旬のまとまった雨の恩恵で、ブドウは水不足の深刻なストレスに陥ることもなかった。
夏が過ぎた9月初旬、2021年ヴィンテージは、夏の夜間気温が涼しかったため、ブドウの植物サイクルが長くなったことから遅熟であることと、霜の害を受けた畑とそうでないところではブドウの収穫量にばらつきがあることが見られた。またその頃のブドウ畑の衛生状態は、べと病の被害を免れ、うどん粉病も多くは見られず、パーフェクトな状態だった。秋分の日前後続いた雨は収穫リズムを遅らせることとなり、場合によって生産者達は収穫時の習慣化された作業を変更しなければならなかった。天候や畑の状況に応じて、彼らは行うべき作業を考慮し判断を下す≪生産者の年≫となったといえる。幾つかの区画での葉摘み作業は、ブドウの実が質を落とすことなくしっかり熟すのを早めるのに役立った。
収穫は10月初旬まで続いた。初期にプレスされたキュベ達はここ数年の平均度数と比較すると低め(14%前後)、色の濃厚さは8以上と高めであった。このヴィンテージ全体に美しい酸が感じられることから、若くしても美味しく飲めるが、高い熟成ポテンシャルがあるとも考えられている。
最終的なデキュヴァージュがもうすぐ終了するという時点で、2021年の収穫量は年平均(92000HL)からすると20から25%ほど低くなると考えられた。7月31日時点での在庫量は昨年とほぼ同じである。ここ2年間の厳しいワイン販売状況(アメリカでの税、ブレキシット、コロナでの自粛生活)の割には悪くなく、安定していると考えられる。全世界のワイン消費者愛好家たちが持つローヌ渓谷ワイン、特にシャトーヌフ・デュ・パップワインに対する愛着度の大きさによるものであろう。
生産者情報:
アペラシォン最新情報 : www.chateauneuf.com