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新興産地が教えてくれること。

ソムリエ朝倉達也です。

この10年そこらでワイン業界の地図は大きく塗り替えられてきました。

インドや中国における栽培面積の急速な増加、Climate changeにより高緯度の産地でのブドウ栽培が可能になった、加えて各国のワイン法も色々と変更がなされていること、最近のビックニュースではシャトー・シュヴァル・ブランとオーゾンヌがサンテミリオンのグランクリュクラッセから脱退したことなどなど、、、

ソムリエ協会の教本は年々分厚くなり、昔の知識ではなまじ追いつきません。

ソムリエ資格をお持ちの皆さまには常にブラッシュアップに励んで欲しいと願っているばかりです(もちろん僕も含めてですが、、、)

 

新興産地の良い点といえばお固いワイン法がないので、フランスのAOCようなブドウ品種に捉われずに自分たちでその土地の風土や気候を考慮して、ワイン作りの手段を選択できることが挙げられると思います。

もちろんそれによってワインメーカーの意図や狙い、戦略などが見えてくるんですね。

 

今回紹介するイスラエルや、他に挙げると南アフリカなどは恵まれた気候と土壌、立地を加味した上で多くの国際品種を植えています。

今までのワインファンの方々ならば、、

Cabernet Sauvignon=ボルドー、ナパ、クナワラ

Riesling=アルザス、ドイツ、クレアヴァレー

Sauvignon Blanc=ロワール、ボルドー、マルボロ

などなどの図式が頭の中ですぐに出来上がるので「なんで南アフリカのカベルネなの?」 「ピノグリはアルザスでしょ!」という意見をお持ちの方も多くいらっしゃることだと思います。

しかしこれらの新興産地のワインは、科学的な気候や土壌調査、標高などをもとに最も良い働きをするであろうというブドウを選択しているわけです。

つまり、コストパフォーマンスが非常に高いことが考えられるわけです。

イスラエルのヴィオニエ

今回ご紹介するのはイスラエルを代表するワイナリーである、GOLAN HEIGHTS WINERY2017年のヴィオニエです。

イスラエル北部のゴラン高原にて1983年に創業されたこのワイナリーは、誕生当初から最先端の技術を導入しておりモダンな技術と伝統的な技術の融合を図っている同国、最大規模のワイナリーです。

標高は400-1,200mと非常に多岐に渡り、高緯度の畑と低緯度の畑の差はフランスの最北部と最南部ほどの違いがあり、こういった理由により地中海性気候でありながらも様々な品種を植えることが可能になっています。

このヴィオニエというブドウ品種は白ワイン用ブドウの中では最もアロマティックな香りを持つ品種であると知られてはいるその反面、とてもデリケートで栽培が難しく今でさえルーツである南ローヌ以外ではあまりその典型的な香りや味わいの表現は難しいとされてる品種です。

しかしながら桃、アプリコット、白い花のアロマに仄かなスパイスのアクセントが加わるこの香りはまさしくこの品種の香りの特徴そのもの。そしてアルコール由来の力強さより大人しさがあって品があります。

エスニックフード、チキンビリヤニなど食べ物のイメージが膨らみます。

このように今ではそのブドウのルーツとされてる地域と同じもしくはそれ以上のパフォーマンスをする産地もどんどん出てきています。

 

我々はソムリエは「より良いモノを適正な価格でお客様へ」がモットーです。

その為にも今までの固い頭の図式を壊してもっと自由に、もっとクリエイティヴにゲストへのワインの提案をしてゆくべきなのではないでしょうか。

まだ見ぬ新しい産地のワインたちは我々の職種の未来と同じ。

どう取り上げて、どうスポットライトを浴びせて輝かせていくかです。

それを生かすも殺すも自分次第。より自分の意思をゲストに共感していただくべく精進してゆこうと思います。

 

朝倉達也

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