樹齢50年以上の単一畑にフォーカス
ルブレック設立から20年。数々の伝説を打ち立てたデヴィッド・パウエルが2013年に古巣を去り、息子カラムと新たなプロジェクトを始めた。「パウエル&サン」。シンプルな名前から、バロッサ・ヴァレーの歴史を塗り替えた大男の意気込みが感じられる。親子の狙いは樹齢50から120年の古木の単一畑を探し出して、畑の個性を表現したワインを造ること。その狙いは早くも達成され、ワイン・アドヴォケートを初めとする世界の評論家を打ちのめしている。

冷涼なエデン・ヴァレーのエレガンス
今回のベンチャー事業で注目すべきはエデン・ヴァレーからリースリングとシラーズを生産していること。バロッサ・ヴァレーはカリフォルニアのナパヴァレーに相当する有名産地だが、エデン・ヴァレーはそれほど有名ではない。まだ開拓されていない畑が残っている。温暖化が進む中でバロッサより涼しいのも利点だ。「バロッサ&エデン・ヴァレー・シラーズ」や「レイケル・エデン・ヴァレー・シラーズ」は力強さと優雅さが入り混じった新境地をうかがわせる。ドミニク・ローランの新樽で熟成したフラッグシップの一つ「クレー・マラナンガ・シラーズ2016」はパーカーポイント98点。「卓越した優美さとエレガンスをたたえている」と評された。
有機栽培か、ビオディナミのブドウを使い、剪定から畑の手入れまですべてを親子の手で行っている。小樽、フードル、パンチョンを組み合わせて醸造し、豊満な果実とフレッシュ感のバランスをとっている。トルブレック時代から、実は白ワイン造りの名手でもあったが、樹齢90年の樹から造る「エデン・ヴァレー・リースリング」を飲めば、パウエルが赤も白もうまくこなす非凡なワインメーカーだということはよくわかるだろう。伝説の第二章が幕をあけた。