ワイン愛好家は、完璧にペアリングされたワインが美味しい食事をさらに美味しくしてくれると認識しているが、その逆もまた然り。ある種の食品がワインの風味に影響を与えることがあるのだ。このたび、ACSのJournal of Agricultural and Food Chemistry誌に掲載された研究者らは、脂質(チーズ、肉、植物油などの食品に多く含まれる脂肪分子)がブドウのタンニンと相互作用し、ワイン化合物の好ましくない風味を軽減する仕組みを解明した。
タンニンは、赤ワインの苦味や渋味の原因となるポリフェノール化合物で、ワインテイスターは、特定の食品がこれらの感覚を軽減し、ワインの風味を向上させることに気付いているが、その理由は科学者にもわかっていない。いくつかの研究では、タンニンが分子レベルで脂質と相互作用することが示唆されている。食品中の脂質は、液体や固体に分散した脂肪球として存在し、Julie Géan氏らはタンニンがエマルジョン中の脂質の大きさや安定性にどのように影響するかを調べたいと考えた。また、人間のボランティアにとって、植物油の摂取がタンニンの味にどのような影響を与えるかについても調べた。
研究者たちは、オリーブオイル、水、リン脂質の乳化剤を使って水中油型のエマルションを作った。その後、カテキンと呼ばれるブドウのタンニンを加え、さまざまな生物物理学的手法を用いて乳化液中の脂質を調べた。その結果、タンニンが油滴を包む乳化剤の層に入り込み、より大きな油滴を形成することがわかった。
味覚テストでは、タンニン溶液を味わう前に、菜種油、グレープシードオイル、オリーブオイルをスプーン1杯ずつ摂取すると、化合物の渋みが軽減された。オリーブオイルの効果が最も大きく、タンニンは渋みではなく、フルーティーに感じらる。生物物理学的な結果と感覚的な結果を総合して、研究者らはタンニンは口中の油滴と相互作用し、唾液中のタンパク質と結合して渋みの原因となる可能性を低くすることができると結論づけた。