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世界三大酒精強化ワイン マデイラ編

ソムリエ朝倉達也です。

世界三大酒精強化ワインを辿る寄稿も今回が最終回となりました。
今回のテーマはマデイラワインです。

マデイラワインとは?

マデイラワインはポートワインと同じくポルトガルで作られる酒精強化ワインですが生産されるのは本土から南西に1,000キロほど離れたマデイラ島にて造られているワインです。
エンリケ航海王によって開発された楽園のような島で、島の海岸線は断崖絶壁でここを段々畑にして開墾をし、ブドウ栽培が行われています。
多くの畑は火山性の土壌により高い酸が保持されます。

マデイラ島でのワインは最初の開拓者が1419年に定住し始めたときから生産されてきました。
その後大航海時代の17世紀、アメリカ大陸の航路上に位置したマデイラ島にて積み込まれたワインは赤道を越える航海を終えると、特有のフレーヴァーを持つことが発見されました。
ワインにおける最大の大敵と考えられた酸化と高温環境での保管がポジティブに作用したのはこの上ない発見だったと言えるでしょう。
その後はジブラルタル海峡を巡る紛争により北米やカリブ島に向かう船がマデイラ島を経由しなくなったことによりマデイラ島のワインは大きな市場を失うことになりました。

行き場のなくなったワインは保存性を高めるために生産されたワインの一部を蒸留し、残りの蒸留してないワインと混ぜることで酒精強化を行い、保存性を高めました。
そして島内で加熱をするプロセスが開発され、長い航海を経ることと同様の風味を得ることに至りました。

加熱のプロセスは2つあります。

ひとつは「カンテイロ/Canteiro」と呼ばれるもので、平均30℃に近い温度の倉庫に樽を並べ、天然の太陽熱により長い年月を経てゆっくりと熟成をさせるものです。
基本的に10年以上の熟成期間を経る最高品質のものに選択されるオプションです。

もうひとつは「Estufa」と呼ばれる」貯蔵タンク内に人工的な加熱装置を設置し、高温かつ短期間で加熱熟成の効果を与える方法です。ほとんどのマデイラはこの工程を経ます。

マデイラはI.V.B.A.M.という政府の機関により管理され用いられるブドウ品種により以下のタイプに分類されます。

Sercial / 辛口タイプの白

Verdelho / 中辛口タイプの白

Boal / 中甘口の白

Malvasia / 濃縮感のあるリッチな甘口白

Tinta Negra Mole / 甘口から辛口まで生産可能な黒ブドウ

Terrantez / 極めて生産量の少ない中甘口の白

Boal 10 years old / JUSTINO

輝きのある深いアンバーの外観 粘性は高くクリア

濃密な香り
ドライなイチジク、デーツ、サルタナ、黒蜜、コーヒー、タバコ、リコリス、オランジェットの香りが豊かに感じられ、味わいも香りと同じ印象が顕著に立ち上がる。

特筆すべきは酸の高さで、香りからは連想できなかったレモンキャラメルのような香り高い酸味がアタックからフィニッシュまで継続され、印象的な余韻を形成しています。

Boalの味わいは中甘口になるので食事でも中盤から後半の登場になるでしょう。
中華の酢豚のような甘酸っぱいものからチョコレートなど、余韻を形成するワインとして素晴らしい相性を見せる事間違いナシです。

そして特筆すべきはその保存性の高さ!
酸化熟成をそもそも経験しているマデイラは抜栓しても味わいが変化することはありません。
半年以上は常温でも品質は変わらないのでぜひ一家に一本はマデイラをお勧めします!

この度はシェリー、ポート、マデイラという酒精強化ワインというジャンルをお伝え致しました。
ぜひ酒精強化ワインと共に素敵なワインライフをお過ごし下さい。

Boal 10 years old / JUSTINO情報はこちら

ソムリエ朝倉達也

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