Bruno Paillard Cuvée 72
非常に細やかな泡立ちを伴った輝かしいイエローゴールドの外観。
72ヶ月の熟成を経てもなお柑橘のフレッシュさが中心にあるが、仄かに白いアカシアやクチナシのようなフローラルさが次第に広がり、時間経過と共にビスケットやサフランの香りが加わり非常に複雑な印象。
生命力のある溌剌としたアタックに始まり、細やかな泡沫は口内を包むように広がり、それを骨格のある酸が支えてリッチなボディを構成する。
長期間の熟成によるクリーミーなテクスチャーはミッドから正面に現れそれに果実味が寄り添うような形で長い余韻へと繋がってゆく。
Bruno Paillardは言わずと知れた唯一の戦後に設立されたメゾン。
初めてデゴルジュマンの日付を全てのキュヴェに記載したメゾンでもあり、一時期は全世界のジョエル・ロブショングループのハウスシャンパンであったこともご存知の方は多いだろう。
数年前だっただろうか、ベースラインのプルミエールキュヴェを全てエクストラ・ブリュットのスタイルに路線を変更して、いち早く辛口嗜好の世間に対応をした。
老舗の多くは長い伝統を守ることを美徳とし、それはそれで大事なことだが、このようなご時世の中では、より時代に合わせて形態を順応させるようにしてゆくフレキシブルさもまた必要だと言えよう。
このキュヴェ72もその一つである。
ベースラインのキュヴェを更に通常の倍の72ヶ月の熟成を経てリリースをさせるこのメゾンの新しいラインナップである。
いわゆるベースラインのフレッシュさに少しの熟成感が加わった、ノンヴィンテージとヴィンテージの間のような今飲んで丁度良い味わい。
夏から秋にかけての季節の変わり目にはピッタリであろう。
昨今ではクレマンなどでも高品質なものも多いし、実際私も普段飲みはクレマンドボルドーやペットナットが多い。
ただこうやってシャンパーニュを飲むと改めてスケールの違いを感じるものだ。
業界としては念願の酒類提供の再開となった。
これまで以上にワインをレストランでサーヴィスすることに有り難みを感じながら、職務を全うしていこうと思う。
メゾンドタカ芦屋 朝倉達也