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2020年ボージョレ地区ヴィンテージ・リポート

早期の収穫が見込まれるヴィンテージ

ボージョレワイン委員会によると、この年は暖冬の影響でブドウの芽吹きが例年平均よりも一週間早く、全体的にブドウの生育が早く進んでいるため、比較的早期に収穫を迎える年になる予想です。4月~5月まで日照りが強く乾燥した暖かい気候が続いたため、今年はブドウの開花も早く、一番早い区画で5月20日頃には最初の開花が見られ、6月1日にはボージョレの殆どの畑で開花を迎えました。これは、2011年と2007年に次ぐ史上3番目に早い開花となります。

下の写真は、開花後のブドウを撮影したものです。ブドウの花からは、アカシアの花のような甘い香りが仄かに感じられます。ブドウの花には、「花びら」というものがなく、おしべとめしべの両方があり、開花後一週間ほどで受粉し、めしべの根本に小さな緑の果実ができます。これが「結実」です。通常、ブドウの収穫期の目安は、開花からおよそ100日後と言われています。

6月5日~12日にかけて冷たい雨が降り続いた後に気温が上昇し、暑く乾燥した夏を迎えました。この雨で土壌に必要なだけの水分が蓄えられ、夏の干ばつを乗り切るのに理想的なコンディションが整いました。ブドウの健康状態は非常に良好で品質・収穫量ともに期待が持てます。2019年は、悪天候により非常に収穫量の少ない年となりましたが、2020年は通常通りの収穫高に戻るでしょう。

ボージョレワイン委員会の発表では、今年は8月下旬の早期収穫になる可能性が高いとの予想が出ていますが、ドメーヌ・ド・ラ・マドンヌでは、よく熟れたブドウを確保するため、周囲の生産者よりも10日近く収穫を遅くしています。このため、収穫の開始は9月第2週頃になる見込みです。当主ブルーノによると、毎年マドンヌの遅摘みブドウは、非常に高い糖度を湛えつつも、なお酸とのバランスが良く、殆ど甘みを感じるほどに柔らかなタンニン(渋み成分)、チェリーを思わせる複雑味のあるアロマを持つワインに仕上がります。

2015年や2017年にやや近いスタイルを持つ優良年

ブルーノからの情報によると、7月初旬時点でブドウは非常に小さな粒をたくさん付けています。粒の小さなブドウは、水分の割合が小さく、果皮や種の割合が高くなるため、香味成分や果実味がギュッと濃縮した良質なワインが作られるという良い兆候を示しています。

日中は豊かな日照に恵まれ、冷たい北風が吹きつけるため、夜の間は涼しい気候が保たれています。ブドウは暖かな太陽光を浴びることで糖度が上がり、冷涼な気温にさらされることで酸を維持するため、昼夜の寒暖差は、豊かな糖度と酸の両方を必要とするワイン用ブドウの成熟にとって理想的な気候条件であるとされています。

ブドウの葉は健康的なライトグリーンを湛えています。これは、ブドウの栄養バランスが非常に良好であることを示しています。雨のない乾燥した天気が続くことによってブドウのツルや葉の生長が止まり、全ての栄養素が実(ブドウの糖分とポリフェノールの成熟)に集中しています。

8月6日にブルーノから送られてきたビデオレターによると、今年のマドンヌのヌーヴォーは、最高の年と言われた2015年や深みのある果実の味わいを特徴とする2017年にやや近いスタイルのワインが作られる見込みです。

ドメーヌのブドウ畑の中でも特に勾配の険しい「ヴェルネイ」という有機栽培の区画でブドウの木に掴まりながら2020年のヌーヴォーについてリポートしてくれているドメーヌ・ド・ラ・マドンヌの当主ブルーノ・ベレール。毎年必ず着用している 「I love Beaujolais ❤」 のキュートなTシャツがトレードマークです。

以下は、2017年ヴィンテージのヌーヴォーを瓶詰した直後のテイスティング・コメントです。

ワインの外観は美しいルビー色です。黒果実のニュアンスが主体的に感じられるアロマにスパイスとダークチェリーの香りが複雑さを与えています。口に含むと、よく熟れた甘やかなタンニンが感じられます。香りは非常に複雑で、黒果実、ブラックチェリー、スパイスの香りに黒い花の香りが仄かに漂い、どこまでも続く長い余韻が広がります。2015年や2005年にやや近いスタイルを持つ大変に優れたヴィンテージです。(2017/10/17 ブルーノ・ベレール)

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